当画廊では、約5年ぶりとなる井手尾摂子展を開催致します。
井手尾の作品は「テンペラ」という顔料を卵などで溶き作る、ヨーロッパ中世時代に絵を描く画材として使用された水溶性の絵の具と金箔やプラチナ箔などを、テンペラに適した下地を施したパネルに、時にはレリーフ状の凹凸もつけながら描かれています。その様式は、ヨーロッパ中世の戯曲的な叙情性と日本的な装飾性を併せ持ち、幻想的でナルシストな一面がありながら、どこか冷静な客観性を併せ持つ独自の世界を創り出しており、「ヴィーナス誕生」や「春」を描いた中世イタリアの画家・ボッチチェルリや17〜18世紀の日本を代表する画家・尾形光琳の影響を見て取ることが出来ます。
本展では、この度の個展の「春・桜」をテーマとして描かれた作品を中心に、屏風仕立てにして描かれた作品や公募展出品作も含め、大作から小品までご高覧頂きます。
是非とも、テンペラと箔の独特の魅力を持つ井手尾摂子の春色の世界をご堪能下さいますようご案内申し上げます。
画廊主 梅津宏規 |